南熱海で体験する

頼朝の一杯水

源頼朝は伊豆の配所の蛭ヶ小島で、この地を中心に流人として二十年を送りました。頼朝の有力な目付役である伊東祐親が、中央権門の番役で3年程京都に上っている間に、祐親の娘、八重姫と頼朝との間に千鶴丸と呼ぶ男子が生まれました。帰郷しこれを知った祐親は平氏への聞えをおそれ、千鶴丸を滝に捨て、頼朝を殺そうとしました。頼朝は危難を逃れ伊東を脱出し、伊豆山へ逃れる途中、険しい山路を登っていくと喉が渇ききってしまいました。頼朝は従者に「水はないか」と聞くと「この上に5・6本の梅の木が見える、あそこまで行けばきっと水があるでしょう」と答えました。頼朝はそれに力を得て山路をよじ登りましたが水はありませんでした。がっかりして腰をおろした時、腰に差していた刀の鐺が土に当るとそこから水がにじみ出てきました。そこを掘ると、清水がこんこんと湧き出し、その水で喉の渇きをうるおしました。